【食品添加物の発がん性】危険とされる成分の噂を公的評価で検証
食品添加物をめぐる不安の中でも、特に関心が高いのが発がん性だ。
「発がん性が疑われる」と報道された物質が、必ずしも通常の食生活でがんを引き起こすことを意味するわけではない。ここでは、代表的な2つの論点を整理する。
アスパルテームは発がん性があるのか
アスパルテームは、2023年7月14日に国際がん研究機関(IARC)によって、発がん性分類のグループ2B(ヒトに対して発がん性がある可能性がある)に分類された。
この発表が世界的な話題になった理由は、人工甘味料として幅広い食品や飲料に使用されている成分だったためだ。
ただし、同じ日に発表されたFAO・WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)の評価では、従来のADIを変更する必要はないと判断された。
- IARC:グループ2Bに分類
- JECFA:ADIを0~40mg/kg体重/日に維持
- 日本:1983年から食品添加物として指定
- 2026年:上記の国際評価を理解する際も、発がん性の根拠と実際の摂取リスクを区別する必要がある
ここで重要なのは、IARCとJECFAでは評価の目的が異なることだ。
IARCは発がん性を示す科学的証拠の強さを分類する。一方、JECFAは摂取量や健康影響を踏まえ、実際のリスクを評価する。
つまり、グループ2Bという分類だけを見て、アスパルテームを含む食品を食べるとがんになると判断することはできない。
なお、アスパルテームには特別な注意が必要な人もいる。
フェニルケトン尿症(PKU)の人は、アスパルテーム由来のフェニルアラニンの摂取に注意しなければならない。 日本では、アスパルテームを含む食品について、L-フェニルアラニン化合物を含む旨の表示が求められている。
亜硝酸ナトリウムは発がん物質なのか
ハムやソーセージに使われる亜硝酸ナトリウムも、発がん性をめぐって議論される成分だ。
問題の背景にあるのは、亜硝酸塩とアミン類が反応し、N-ニトロソ化合物が生成する可能性である。
しかし、ここで区別すべきなのが、亜硝酸ナトリウムという添加物と、加工肉という食品群の評価だ。
WHOは、ハム、ソーセージなどの加工肉をIARCグループ1に分類している。これは加工肉の摂取と大腸がんとの関係について、ヒトで十分な証拠があると判断されたためだ。
加工肉がグループ1であることは、亜硝酸ナトリウム単体がグループ1に分類されたことを意味しない。
食品安全委員会も、亜硝酸ナトリウムについて、食肉の色を安定させる効果やボツリヌス菌の増殖を抑える役割を説明している。
添加物のリスクだけに注目するのではなく、加工肉を食べる頻度や食生活全体を見直すことが現実的な対応になる。
発がん性の情報を読むときの3つの基準
- IARCの分類: 発がん性を示す証拠の強さを示す。
- ADI: 一生涯、毎日摂取し続けても健康への悪影響がないと考えられる摂取量の目安。
- 実際の摂取量: 日常生活でどれだけその物質を摂取しているかを示す。
この3つを混同しないことが、食品添加物に関する情報を正しく理解する第一歩だ。
【ADIと食品添加物の摂取量】安全性評価の仕組みを理解する
食品添加物の安全性を判断するとき、欠かせない指標がADI(許容一日摂取量)だ。
ADIとは何か
ADIは、Acceptable Daily Intakeの略称で、日本語では許容一日摂取量と呼ばれる。
人がある物質を毎日一生涯にわたって摂取し続けても、健康に悪影響がないと考えられる1日当たりの量を示す。
単位は、体重1kg当たりのmgで表される。
例えば、ある添加物のADIが10mg/kg体重/日であれば、体重50kgの人については、次のように計算できる。
\[
10 \times 50 = 500\text{mg/日}
\]
これは、その人の体重を基準にしたADIの計算例であり、毎日500mgを積極的に摂取してよいという意味ではない。
ADIはどのように決められるのか
食品安全委員会では、動物試験などから得られた無毒性量(NOAEL)を参考に、安全係数を考慮してADIを設定する。
一般的な考え方は次のとおりだ。
\[
ADI = \frac{NOAEL}{安全係数}
\]
安全係数は通常100が用いられる。動物と人間の違いや、人間同士の年齢・体格・健康状態などの個人差を考慮するためだ。
なお、物質の性質や試験データによって、安全係数は変更されることもある。
日本人の食品添加物摂取量はどの程度なのか
厚生労働省などは、マーケットバスケット方式による食品添加物の摂取量調査を実施している。
これは、スーパーやコンビニなどで市販食品を購入し、食品中に含まれる添加物の量を分析したうえで、実際の食品摂取量を掛け合わせて推定する方法だ。
2023年度の調査では、保存料、着色料、甘味料、発色剤などが対象となった。
その結果、調査対象となった添加物の推定摂取量は、ADIまたは最大耐容一日摂取量(MTDI)を大きく下回っていた。
食品安全委員会の資料では、20歳以上の人の推定摂取量について、対象となった添加物の安全性上、特段の問題はないと評価している。
ただし、この結果には重要な前提がある。
- 調査対象となった添加物に限った結果である。
- 成人の食品摂取量を基礎にした推計である。
- 個人の食習慣によって摂取量は異なる。
- 調査結果は、すべての添加物やあらゆる健康影響を保証するものではない。
特定の加工食品を毎日大量に食べる人と、さまざまな食品をバランスよく食べる人では、摂取状況が異なる。
ADIだけを見るのではなく、実際にどの食品から、どれだけ摂取しているかを考えることが重要だ。
【食品添加物の表示ルール】無添加表示の見分け方と買い物の注意点
食品添加物を自分で確認するために、最も身近な情報源が食品パッケージの原材料表示だ。
原材料表示では何を確認すればよいのか
日本では、加工食品に使用した添加物について、原則として表示することが求められている。
表示方法には、物質名による表示や用途名を併記する方法、一括名による表示などがある。
例えば、次のような表示だ。
- 保存料(ソルビン酸K)
- 甘味料(アスパルテーム)
- 着色料(赤色○号)
- 酸化防止剤(ビタミンC)
- 調味料(アミノ酸等)
- 乳化剤
- 香料
用途名が付いていれば、どのような目的で使用されているのかも把握しやすい。
一方、食品の製造過程で使用されても最終食品に残らない加工助剤や、効果を発揮しない程度の微量が持ち越されるキャリーオーバーなど、表示が免除されるケースもある。
そのため、原材料表示に添加物が記載されていないことだけで、製造工程で一切使用されていないと判断することはできない。
「無添加」「不使用」は安全性の保証ではない
消費者庁は、2022年3月に「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」を策定した。
このガイドラインでは、食品添加物の不使用表示について、消費者に誤解を与える可能性がある10の類型を整理している。
特に注意したいのは次の表示だ。
1.単に「無添加」と書かれている
何を使用していないのかが分からなければ、消費者が実際以上に安全性を高く評価してしまう可能性がある。
2.健康や安全性と結び付けた表示
特定の添加物を使用していないことを理由に、ほかの商品より健康的・安全であると誤認させる表示には注意が必要だ。
3.似た機能を持つ別の成分を使用している
例えば、特定の保存料を使用していなくても、同じような保存機能を持つ別の成分を使用している場合がある。
4.添加物を使用していないように見せる表示
食品表示の制度上、使用できない添加物を使用していないことを強調するなど、消費者の誤解を招く表示も問題になり得る。
このガイドラインは、すべての無添加表示を禁止するものではない。消費者が誤認しないよう、表示の適切性を判断するための指針だ。
買い物で実践したいチェック方法
実際の食品選びでは、次の順番で確認すると分かりやすい。
1. 原材料名と添加物欄を確認する。
2. 気になる成分の用途を調べる。
3. 同じ成分を含む食品を頻繁に重ねて食べていないか考える。
4. 糖分、塩分、脂質などの栄養成分表示も確認する。
5. 無添加という宣伝文句だけで商品を判断しない。
添加物の種類をすべて暗記する必要はない。まずは普段よく購入する飲料、菓子、加工肉、総菜などの表示から確認するとよい。
【プロの結論】本当に避けるべき食品添加物と賢い選択基準
食品添加物の安全性を考える際、最も避けたいのは「名前が難しいから危険」「天然だから安全」「無添加だから健康的」といった単純な判断だ。
科学的な安全性評価は、成分の性質、摂取量、使用方法、人体への影響を組み合わせて行われている。
特に確認を優先したい人・食品
| 対象 | 確認したいこと |
|---|---|
| 加工肉を頻繁に食べる人 | 添加物だけでなく加工肉全体の摂取頻度 |
| ダイエット飲料を多用する人 | 人工甘味料への依存と食生活全体 |
| フェニルケトン尿症の人 | アスパルテームの表示 |
| 特定の成分に反応する人 | 医療専門家と相談し、該当成分を確認 |
| 小さな子どもの食事 | 特定の加工食品に偏らない食習慣 |
避けるべき成分を探すより、摂取習慣を見直す
食品添加物をできるだけ減らしたい人は、加工食品の利用頻度を調整したり、野菜、果物、豆類、魚などを組み合わせたりする方法が現実的だ。
ただし、加工食品を完全に排除する必要はない。保存料や発色剤には、食品の品質を保ち、食中毒のリスクを抑えるための役割もある。
また、食品添加物を使用していない食品でも、栄養バランスが悪かったり、保存状態が適切でなかったりすれば、健康上の問題は起こり得る。
2026年におすすめしたい判断基準
食品選びで優先したいのは、次の4点だ。
- 成分の安全性: 公的な評価や使用基準を確認する。
- 摂取量: 同じ成分を含む食品の重複摂取に注意する。
- 体質との相性: 特定の疾患や過敏反応がある場合は個別に対応する。
- 栄養バランス: 添加物の有無だけでなく、糖分・塩分・脂質・食物繊維なども見る。
食品添加物の安全性は、単純なランキングでは測れない。個別の成分に関する科学的評価と、実際の食生活を結び付けて考えることが、最も合理的な選び方になる。
【食品添加物危険性ランキング】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:日本で最も危険な食品添加物は何ですか?
A1:国が公表している一律の危険度ランキングはありません。亜硝酸ナトリウムやアスパルテームなどは健康影響に関する議論や国際評価がある成分ですが、使用条件や摂取量を含めて判断する必要があります。
Q2:食品添加物には発がん性があるのでしょうか?
A2:すべての食品添加物に発がん性があるわけではありません。アスパルテームはIARCのグループ2Bに分類されていますが、JECFAはADIを変更する必要はないと判断しています。発がん性の証拠と、実際の摂取によるリスクは区別して考える必要があります。
Q3:食品添加物は毎日食べても大丈夫ですか?
A3:日本で使用が認められている食品添加物は、規格や使用基準に基づいて管理されています。通常の食生活では、調査対象となった添加物の摂取量はADIを大きく下回っています。ただし、個人の摂取量や体質によって状況は異なります。
Q4:人工甘味料は砂糖より危険ですか?
A4:一律に比較することはできません。人工甘味料には個別の安全性評価があり、WHOは長期的な体重管理を目的とした非糖質系甘味料の使用を推奨していません。甘味料の安全性と、食生活全体における健康上のメリットは別々に考える必要があります。
Q5:「無添加」と表示されている食品は安全ですか?
A5:無添加表示は、食品全体の安全性を保証するものではありません。何を使用していないのか、ほかの成分で代替されていないか、栄養成分や保存方法は適切かを確認しましょう。
Q6:天然由来の食品添加物なら安心ですか?
A6:天然由来であることだけでは、安全性は判断できません。天然物にも健康への影響を持つ成分はあります。原料の由来だけでなく、物質の性質と摂取量を確認することが大切です。
まとめ:食品添加物の危険性はランキングより科学的な評価で判断する
2026年10月現在、食品添加物について国が公表する一律の危険性ランキングは存在しない。
保存料、着色料、人工甘味料、発色剤には、それぞれ異なる用途と安全性評価がある。アスパルテームのIARCグループ2B分類や、亜硝酸ナトリウムをめぐる発がん性の議論も、実際の摂取量や評価機関の判断と合わせて理解する必要がある。
特に押さえておきたいのは、次の3点だ。
1. 食品添加物の安全性は成分ごとに評価されている。
2. ADIと実際の摂取量を比較することで、日常的なリスクを考えられる。
3. 無添加という表示だけでなく、原材料、栄養成分、食生活全体を見て商品を選ぶ。
食品添加物を過度に恐れて食事の選択肢を狭める必要はない。一方で、加工食品ばかりに偏った食生活を見直すことには意味がある。
本当に大切なのは、危険な成分の名前を暗記することではなく、科学的な情報をもとに、自分に合った食品を選ぶ力を身に付けることだ。
主な公的参考資料:食品安全委員会、消費者庁、厚生労働省、WHO、IARC、FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)。法令・公表情報の確認基準日:2026年10月30日。 (出典: 食品 添加 物 危険 性 ランキング(Yahoo!ニュース))