【仕組みを解説】カリウムがナトリウムの排出を助ける理由
塩分を排出する食べ物を理解するうえで、最初に知っておきたいのがカリウムとナトリウムの関係です。
ナトリウムは人体に必要なミネラルですが、摂りすぎると体内の水分バランスに影響し、血圧を上昇させる要因になります。そこで重要になるのが、腎臓による電解質の調整です。
ナトリウムが体外へ排出される仕組み
腎臓は血液をろ過し、必要な物質を再吸収しながら、余分な水分や電解質を尿として排出しています。
カリウムには、腎臓からのナトリウム排泄を促す作用があります。また、血管を拡張させる働きもあり、血圧を適切に保つことに役立ちます。
仕組みを整理すると、次のようになります。
1. 食事からカリウムを摂取する。
2. カリウムが体内の電解質バランスの調整に関わる。
3. 腎臓からのナトリウム排泄が促される。
4. 体内のナトリウムと水分のバランスが整いやすくなる。
5. 血圧の上昇を抑える方向に働く。
厚生労働省の健康情報サイト「e-ヘルスネット」でも、カリウムにはナトリウムの排出を促し、血圧低下につながる作用があると説明されています。
カリウムとナトリウムのバランスが大切
注目したいのが、ナトリウムとカリウムの摂取比率です。
塩分の多い食事を続けながらカリウムだけを増やすよりも、塩分を減らしながらカリウムを適切に摂取するほうが合理的です。
このバランスを考える際に使われるのが「ナトカリ比」です。
- ナトリウム:主に食塩から摂取するミネラル
- カリウム:野菜、果物、豆類などに多いミネラル
- ナトカリ比:ナトリウムとカリウムの摂取バランスを示す指標
ナトカリ比を低くする食生活は、高血圧予防の観点からも重視されています。
ただし、カリウムを食べれば、摂取した塩分が瞬時に消えるわけではありません。大量の水を飲んだり、特定の果物を一度に食べたりしても、過剰な塩分を即座に帳消しにはできません。
塩分の摂取量を抑え、腎臓の正常な働きを支える食事を継続することが基本です。
【食品10選】塩分の排出を助けるカリウム豊富な食べ物
塩分の排出を助ける食材には、野菜、果物、いも類、豆類、海藻などがあります。
毎日の食卓に取り入れやすく、カリウムを補給しやすい食品を10種類紹介します。
1.ほうれん草
カリウム量:690mg/100g(生)
ほうれん草はカリウムが豊富な代表的な緑黄色野菜です。おひたし、ソテー、和え物など幅広い料理に使えます。
ほうれん草にはビタミンA、葉酸、鉄なども含まれています。
ただし、カリウムは水に溶けやすい性質があります。ゆでるときには一部がゆで汁に流れ出るため、摂取量を意識するなら電子レンジ調理や蒸し調理も選択肢です。
2.バナナ
カリウム量:360mg/100g
手軽に食べられる果物の代表格です。皮をむくだけで食べられるため、朝食や間食にも向いています。
バナナはカリウムに加えて、炭水化物やビタミンB6も含んでいます。
食事の準備に時間をかけられない人にとって、日常的に取り入れやすい食品です。ただし、糖質やエネルギーも含むため、食べ過ぎには注意しましょう。
3.じゃがいも
カリウム量:約410mg/100g(生・皮なし)
じゃがいもは主食の付け合わせや副菜に使いやすい食材です。エネルギー源となる炭水化物も含んでいます。
おすすめは、蒸しじゃがいもや薄味のポテトサラダです。
一方、フライドポテトに塩を多く振ると、減塩の目的から外れてしまいます。調理方法と味付けを意識してください。
4.アボカド
カリウム量:約590mg/100g
果物の中でもカリウムが比較的多い食品です。不飽和脂肪酸や食物繊維も含んでいます。
サラダや納豆との組み合わせにも向いています。
ただし、脂質が多くエネルギーも高いため、食事全体のバランスを考えて適量を取り入れましょう。
5.里いも
カリウム量:約640mg/100g(生)
里いもは、いも類の中でもカリウムが豊富な食材です。煮物や蒸し料理に使いやすい特徴があります。
食物繊維も含まれており、和食との相性も良好です。
ただし、しょうゆや塩分の多い煮汁を大量に使うと、せっかくの食事改善効果を損ないかねません。だしを活用した薄味の調理がおすすめです。
6.小松菜
カリウム量:約500mg/100g(生)
小松菜はカリウムだけでなく、カルシウムや鉄なども含む野菜です。
炒め物、みそ汁、煮びたしなどに使えます。
ほうれん草と交互に食卓へ取り入れることで、野菜の種類を増やしやすくなります。
7.納豆
カリウム量:約660mg/100g
納豆は大豆由来の植物性たんぱく質や食物繊維も摂取できる発酵食品です。
朝食に取り入れやすく、ご飯や野菜との組み合わせにも向いています。
注意したいのは付属のたれです。すべて使うと塩分が増えるため、たれを少なめにする、酢や薬味を使うなどの工夫ができます。
8.ブロッコリー
カリウム量:約460mg/100g(生)
ブロッコリーにはビタミンCや食物繊維なども含まれています。
サラダや温野菜、肉料理の付け合わせなど、使い道が豊富です。
塩を多く使わなくても、オリーブオイル、レモン、こしょうなどで風味を付けられます。
9.キウイフルーツ
カリウム量:約300mg/100g(緑肉種)
キウイはカリウムとビタミンCを補える果物です。朝食や食後のデザートに適しています。
生の果物を取り入れることは、加工食品や塩分の多い間食を減らすきっかけにもなります。
10.わかめ・昆布などの海藻類
カリウムが含まれる代表的な食品
わかめ、昆布、ひじきなどの海藻類は、ミネラルを含む食品です。
海藻類は乾燥品、塩蔵品、水戻し後で栄養成分が大きく変わるため、単純に同じ重量で比較することはできません。
また、塩昆布や昆布の佃煮は食塩を多く含む場合があります。塩分対策として取り入れるなら、無塩に近い乾燥わかめを戻したものや、薄味の海藻サラダなどを選びましょう。
主要食品のカリウム量と特徴を比較
文部科学省の「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」の可食部100g当たりの数値を中心に整理しました。数値は原則として生の食品を対象としており、調理後の値とは異なります。
牛乳やヨーグルトもカリウム補給に役立つ
野菜や果物だけでなく、乳製品もカリウムを含む食品です。
文部科学省の食品成分データでは、普通牛乳のカリウム量は100g当たり150mgです。牛乳200mlなら、およそ300mgのカリウムを摂取できます。
日本高血圧学会も、野菜や果物に加えて牛乳・乳製品を取り入れる食生活を紹介しています。
ただし、乳製品は製品によって脂質、糖分、食塩相当量が異なります。加糖ヨーグルトや塩分を含むチーズばかりに偏らず、無糖ヨーグルトや牛乳なども活用しましょう。
【2025年版の基準】カリウムの摂取目標量と食塩相当量は?
塩分を排出する食事を考えるなら、カリウムだけでなく食塩相当量の目標も把握しておく必要があります。
厚生労働省が策定した「日本人の食事摂取基準(2025年版)」は、2025年度から2029年度までの5年間に使用される栄養基準です。
成人のカリウム摂取目標量
2025年版では、18歳以上のカリウム摂取目標量が次のように設定されています。
成人の1日当たりのカリウム摂取目標量
男性
以上/日
女性
以上/日
これは生活習慣病の発症予防を目的とした目標量です。必ず全員が同じ量を摂らなければならないという意味ではありません。
また、2023年の国民健康・栄養調査では、20歳以上のカリウム摂取量の平均値は男性2,370mg、女性2,190mgでした。男女ともに目標量を下回っています。
食塩相当量の目標量
カリウムを増やすだけでなく、食塩そのものを減らすことも欠かせません。
| 対象 | 1日の食塩相当量 |
|---|---|
| 成人男性 | 7.5g未満 |
| 成人女性 | 6.5g未満 |
| 高血圧患者 | 6.0g未満を目安に医師と相談 |
一般成人の数値は2025年版の食事摂取基準によるものです。高血圧患者の6g未満は、日本高血圧学会が推奨する減塩目標です。
2026年最新の調査で分かった日本人の塩分摂取状況
2026年に減塩を考えるうえで見逃せないのが、厚生労働省の令和6年(2024年)国民健康・栄養調査です。
2025年12月2日に公表された結果によると、20歳以上の食塩摂取量の平均は次のとおりでした。
2024年の日本人の食塩摂取量
20歳以上の男女平均
男性
10.5g
女性
8.9g
日本人の食塩摂取量は、健康日本21(第三次)が掲げる平均7gという目標を依然として上回っています。
2026年9月15日には、厚生労働省が健康日本21(第三次)の一部改正を告示しました。栄養・食生活の分野では、バランスのよい食事を摂る人の割合について、2032年度に70%とする目標が設定されています。減塩だけを切り離すのではなく、食事全体の質を高める方向性が示されています。
つまり、2026年の食生活改善では、野菜・果物・豆類などを組み合わせながら、食塩の摂取量そのものを減らすことが重要です。
【実践編】塩分の排出を助ける食事と2026年の減塩方法
カリウムを豊富に含む食品を知っていても、毎日の食事に取り入れられなければ意味がありません。
大切なのは、無理な食事制限ではなく、続けられる食習慣を作ることです。
朝食・昼食・夕食にカリウムを分散する
日本高血圧学会は、主食・主菜・副菜のそろった食事を1日2回以上取り入れる方法を紹介しています。
同学会が示す食事例では、朝食に牛乳、バナナ、サラダ、昼食に親子丼とサラダ、夕食に魚料理、ほうれん草のおひたし、具だくさんのみそ汁、りんごなどを組み合わせ、1日合計3,071mgのカリウムを摂取しています。
具体的には、次のような食事が考えられます。
朝食:果物と乳製品を取り入れる
- ご飯またはパン
- バナナ1本
- 無糖ヨーグルトまたは牛乳
- 野菜サラダ
昼食:野菜を組み合わせる
- 親子丼などの主食・主菜
- 小松菜のおひたし
- ブロッコリーのサラダ
夕食:いも類と緑黄色野菜を使う
- ご飯
- 焼き魚
- ほうれん草のおひたし
- じゃがいもの蒸し料理
- きのこや野菜の副菜
このように食品を分散すれば、特定の食材に頼らず、栄養バランスを整えやすくなります。
すぐに始められる減塩の方法7つ
カリウムを増やすのと同じくらい重要なのが、塩分の摂取量を減らすことです。
1.麺類のスープを飲み干さない
ラーメン、うどん、そばなどの汁には食塩が多く含まれる場合があります。麺類の汁を全部残すことで、2〜3g程度の減塩につながることがあります。
2.しょうゆやソースは直接かけずにつける
料理全体に調味料をかけると、必要以上に使用しがちです。小皿に少量を取り、つけて食べる方法に変えてみましょう。
3.香辛料や薬味を活用する
こしょう、七味唐辛子、しょうが、にんにく、ねぎなどは、塩分を増やさず料理の風味を引き立てます。
4.酸味を利用する
レモン、酢、かんきつ類などを使えば、薄味でも満足感を得やすくなります。
5.加工食品を食べる頻度を見直す
ハム、ソーセージ、インスタント食品、練り製品などは食塩を含むものが多いため、栄養成分表示を確認しましょう。
6.みそ汁は具だくさんにする
野菜、きのこ、豆腐などを多く入れると、汁の量を抑えながら満足感を得られます。みその量も調整しましょう。
7.食品表示の食塩相当量を見る
商品を比較するときは、ナトリウム量だけでなく食塩相当量を確認する習慣を付けると便利です。
特に加工食品では、1食当たりの数値と100g当たりの数値を混同しないようにしてください。
コンビニでも実践できる減塩・カリウム補給
自炊が難しい人でも、食品の組み合わせを意識すれば食生活を改善できます。
朝食・間食
バナナ+無糖ヨーグルト
昼食の副菜
ブロッコリー+野菜サラダ
夕食の副菜
納豆+豆腐
もう一品
蒸しじゃがいも+温野菜
注意したいのは、野菜サラダでもドレッシングを大量に使えば塩分が増えることです。
また、野菜ジュースや果物ジュースは、商品によって糖質や食塩相当量が異なります。生の野菜や果物を基本にし、ジュースは補助的に利用するのがよいでしょう。
【重要な注意点】腎臓病の人はカリウムを増やしてはいけない?
カリウムは健康維持に欠かせない栄養素ですが、誰にとっても多く摂るほどよいわけではありません。
特に注意が必要なのが、慢性腎臓病(CKD)などで腎機能が低下している人です。
腎機能が低下するとカリウムが体内に蓄積する
通常、腎臓は余分なカリウムを尿中に排出し、血液中の濃度を一定に保っています。
しかし、腎機能が低下すると、カリウムを十分に排出できなくなる場合があります。
その結果、血液中のカリウム濃度が高くなる高カリウム血症を起こす可能性があります。
高カリウム血症は、心臓の電気的な活動に影響し、不整脈などの深刻な問題につながることがあります。
カリウム制限が必要になる可能性がある人
次のような人は、カリウムを積極的に増やす前に医師へ相談してください。
- 慢性腎臓病と診断されている人
- 腎機能検査で異常を指摘された人
- 血液検査でカリウム値が高い人
- 医師からカリウム制限を指示されている人
- 腎臓病の食事療法を受けている人
腎臓病だからといって、全員が同じカリウム制限を受けるわけではありません。腎機能の程度、血液検査の結果、服薬状況などを踏まえて、医師や管理栄養士が摂取量を判断します。
カリウム制限が必要な場合の調理方法
医師からカリウム制限を指示された場合は、食品選びだけでなく調理方法も重要です。
代表的な方法は次のとおりです。
1. 野菜を小さく切る。
2. 水にさらす。
3. たっぷりの湯でゆでる。
4. ゆで汁を捨てる。
5. 新しい調味料で薄味に仕上げる。
カリウムは水に溶けやすいため、ゆでたり水にさらしたりすると、食品中のカリウムを減らせる場合があります。
ただし、こうした調理法をすべての人が実践すべきという意味ではありません。
腎機能が正常な人まで、必要以上にカリウムを減らしてしまうと、栄養バランスが崩れる可能性があります。
腎臓病がある場合は、一般的な健康情報よりも、自分の検査結果に基づく医療者の指示を優先してください。
【塩分を排出する食べ物】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:塩分を摂りすぎたときに食べるとよい果物は何ですか?
A1:バナナやキウイ、アボカドなどがおすすめの候補です。いずれもカリウムを含んでいます。ただし、果物を一度に大量に食べても、摂りすぎた塩分をすぐに排出できるわけではありません。通常の食事の中で適量を取り入れましょう。
Q2:塩分を排出するために水をたくさん飲んだほうがよいですか?
A2:水分補給は大切ですが、大量に飲めば塩分が速く排出されるというものではありません。腎臓が正常に働いていることを前提に、喉の渇きや活動量に応じて適切に水分を補給してください。心臓病や腎臓病などで水分制限がある人は医師の指示に従いましょう。
Q3:カリウムが一番多い野菜は何ですか?
A3:代表的な食品では、ほうれん草、小松菜、里いも、ブロッコリーなどがあります。文部科学省の食品成分データでは、生のほうれん草は100g当たり690mgのカリウムを含んでいます。実際の摂取量は調理方法や食べる量によって変わります。
Q4:塩分を摂りすぎた翌日は何を食べればよいですか?
A4:野菜、果物、いも類、豆類などを組み合わせた、薄味の食事がおすすめです。ほうれん草のおひたし、蒸しじゃがいも、バナナ、無糖ヨーグルトなどを取り入れましょう。翌日に極端な食事制限をする必要はありません。
Q5:腎臓病でもバナナやほうれん草を食べてよいですか?
A5:腎臓病の種類や進行度、血液中のカリウム値によって異なります。カリウム制限が必要な人は、バナナやほうれん草などの摂取量を医師や管理栄養士に確認してください。自己判断で食べる量を増やすことは避けましょう。
まとめ:塩分を排出する食事はカリウムと減塩の組み合わせが基本
塩分を排出する食べ物として注目したいのは、ほうれん草、小松菜、じゃがいも、里いも、バナナ、キウイ、アボカド、納豆、海藻などです。牛乳やヨーグルトも、カリウムを補う食品として活用できます。
2025年版の日本人の食事摂取基準では、成人のカリウム摂取目標量は男性3,000mg以上、女性2,600mg以上です。一方、食塩相当量は男性7.5g未満、女性6.5g未満が目標です。
2026年時点で最新の2024年国民健康・栄養調査でも、日本人の食塩摂取量は平均9.6gと、依然として高い水準にあります。
これから食生活を見直すなら、次の3点を意識してください。
- 野菜・果物・いも類を毎日の食事に取り入れる。
- しょうゆ、みそ、加工食品、麺類の汁などから摂る塩分を減らす。
- 腎機能に不安がある場合は、カリウムの摂取量を医療者と相談する。
塩分対策は、特定の食品を大量に食べることではありません。食塩を減らし、カリウムを含む食品をバランスよく取り入れる習慣こそが、高血圧予防や健康的な食生活につながります。
毎日の食卓にできる小さな工夫から始め、長く続けられる減塩習慣を身につけましょう。 (出典: 塩分 を 排出 する 食べ物(Yahoo!ニュース))