宇宙飛行士の仕事と目指し方を徹底解説!JAXA現役6名と諏訪理の2027年計画
宇宙飛行士と聞くと、ロケットに乗って宇宙へ飛び立ち、無重力の国際宇宙ステーション(ISS)で実験を行う姿を思い浮かべる人が多いだろう。しかし、実際の仕事内容は宇宙での活動だけではない。地上での実験計画、宇宙船の運用訓練、管制室からのミッション支援、研究者との打ち合わせ、次世代の宇宙開発に向けた技術検証など、その業務は幅広い。
2026年10月現在、JAXA(宇宙航空研究開発機構)には星出彰彦、油井亀美也、大西卓哉、金井宣茂、諏訪理、米田あゆの6名が現役宇宙飛行士として在籍している。なかでも注目されるのが、2026年9月にクルードラゴン宇宙船運用14号機(Crew-14)への搭乗が正式決定した諏訪理だ。初飛行は2027年3月以降に予定されている。
宇宙飛行士になるための応募資格や選抜試験の仕組み、実際の訓練内容、日本人宇宙飛行士の歴史、ISSでの1日のスケジュールまで、JAXAとNASAの公式発表をもとに2026年の最新状況を整理する。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 仕事内容:宇宙での実験・船内保守だけでなく、地上での研究開発、訓練、管制支援、広報活動も担当する。
- 現役メンバー:2026年10月現在、JAXAには星出彰彦、油井亀美也、大西卓哉、金井宣茂、諏訪理、米田あゆの6名が在籍している。
- 目指し方:2021年度募集では実務経験3年以上などが応募条件となり、書類選抜から最終選抜まで5段階の審査が実施された。
- 最新ニュース:諏訪理のCrew-14搭乗が2026年9月25日に発表され、2027年3月以降の打ち上げが予定されている。
- ISSでの生活:実験や設備管理に加え、毎日約2時間の運動を行い、微小重力による筋肉や骨への影響を抑える。
【宇宙飛行士の仕事内容】宇宙だけではない地上業務の実態とは?
宇宙飛行士の仕事は、大きく分けると「宇宙での搭乗業務」「地上での技術・運用業務」「訓練業務」「広報・教育活動」の4つに整理できる。
JAXAの公式解説によれば、宇宙飛行士は宇宙空間と地上の両方で宇宙開発を支える専門職だ。ISSでの長期滞在が代表的な仕事として知られるが、実際に宇宙へ行く機会は限られており、搭乗していない期間も多くの業務を担っている。
宇宙で担当する主な仕事
ISSに滞在する宇宙飛行士は、地上では再現が難しい微小重力や高真空といった環境を利用して、さまざまな科学実験を実施する。
- 科学実験:物理学、医学、生物学、材料科学などの研究を実施する。
- 「きぼう」の運用:日本実験棟の設備を操作し、実験装置やシステムを管理する。
- 設備の保守・修理:ISSの電力、通信、空調などの設備を点検し、必要に応じて修理する。
- ロボットアーム操作:補給船の把持や人工衛星の放出などを行う。
- 船外活動:宇宙服を着用してISSの外側で機器の設置や修理を行う。
- 国際共同作業:アメリカ、ロシア、欧州、カナダなどの宇宙飛行士と協力してミッションを進める。
特に重要なのが、宇宙飛行士が単なる実験の参加者ではなく、ISSという巨大な有人施設を運用する技術者でもある点だ。
ISSは地上から約400km上空を周回する施設であり、限られた電力や水、物資を複数国のクルーで共有している。設備の異常や作業の遅れが発生すれば、ほかのクルーや地上の管制チームと連携して対応しなければならない。
そのため、個人の専門知識だけでなく、状況判断力やチームワークも不可欠となる。JAXAの宇宙飛行士の仕事に関する公式資料でも、分刻みのスケジュールに沿って地上管制室と連携する運用体制が紹介されている。
地上での仕事が宇宙飛行士のキャリアを支える
意外に知られていないのが、地上での仕事の多さだ。
JAXAの説明では、宇宙飛行士が実際に宇宙へ行く頻度は、これまでの例では多くが5~10年に1回程度。つまり、宇宙に滞在している時間よりも、地上で準備や支援を行っている時間のほうが圧倒的に長い。
主な地上業務は次のとおりだ。
- 宇宙で使用する実験装置の開発や評価
- ISSや「きぼう」の運用計画の立案
- 地上管制室での通信担当や運用支援
- 将来の宇宙飛行士候補者の訓練支援
- 宇宙探査に関する技術検証や研究活動
- 講演会、教育プログラム、メディア出演などの広報活動
たとえば、宇宙飛行士が管制室で地上から宇宙飛行士との通信を担当することもある。NASAのミッションコントロールで通信を担当する役割はCAPCOMと呼ばれ、宇宙飛行士としての経験を生かしながら、ISSにいる仲間を支える重要な仕事だ。
また、研究者が考案した実験を宇宙で安全に実施できるよう、装置の操作方法や手順を確認することもある。宇宙での作業を成功させるには、打ち上げ前の地道な検証が欠かせない。
つまり、宇宙飛行士は宇宙に行くことだけを目的とする職業ではない。宇宙開発の現場を熟知し、地上と宇宙を結び付ける役割を担う専門家なのである。

【2026年最新版】JAXA現役宇宙飛行士6名と歴代日本人の経歴一覧
2026年10月現在、JAXA公式プロフィールに掲載されている現役宇宙飛行士は6名だ。
その経歴を比較すると、航空自衛隊のパイロット、航空会社の操縦士、医師、地球科学の研究者など、専門分野が大きく異なることが分かる。宇宙飛行士になるために、必ずしも全員が同じ学歴や職歴を持っているわけではない。
現役JAXA宇宙飛行士6名のプロフィール
1.星出彰彦
1968年東京都生まれ。1992年に宇宙開発事業団(現JAXA)へ入社し、1999年に宇宙飛行士候補者として選抜された。
2008年、2012年、2021年の3回にわたり宇宙飛行を経験。2008年には日本実験棟「きぼう」の船内実験室をISSに取り付けるミッションに参加した。2021年にはISS第65次/第66次長期滞在に参加している。
2.油井亀美也
1970年長野県生まれ。防衛大学校を卒業後、航空自衛隊で勤務した元パイロットだ。2009年にJAXA宇宙飛行士候補者として選抜され、2015年に初めてISSへ長期滞在した。
2025年8月にはCrew-11のクルーとして再びISSへ向かい、約166日間の滞在を経験。2026年1月15日に地球へ帰還した。滞在中は「きぼう」での実験や技術実証、通信環境の整備などを担当した。
3.大西卓哉
1975年東京都生まれ。東京大学工学部航空宇宙工学科を卒業後、全日本空輸(ANA)に入社した元パイロットである。
2009年にJAXA宇宙飛行士候補者として選抜され、2016年にISSへ初飛行。2025年にはCrew-10のISS長期滞在クルーとして再び宇宙へ向かい、日本人として3人目となるISS船長を務めた。
4.金井宣茂
1976年東京都生まれ。防衛医科大学校医学科を卒業し、海上自衛隊で外科医師や潜水医官として勤務した経歴を持つ。
2009年にJAXA宇宙飛行士候補者として選抜され、2017年12月から2018年6月までISSに滞在。約168日間のミッションでは、医学・健康関連の実験や船外活動、補給船の運用などに携わった。
5.諏訪理
1977年生まれ。プリンストン大学大学院で地球科学の博士号を取得し、青年海外協力隊、国連の世界気象機関(WMO)、世界銀行などで勤務した異色の経歴を持つ。
2023年に宇宙飛行士候補者として選抜され、2024年10月に正式認定。2026年1月にISS長期滞在搭乗員へ指名され、同年9月にはCrew-14への搭乗が決まった。2027年の初飛行に向けて訓練を続けている。
6.米田あゆ
1995年生まれ。東京大学医学部医学科を卒業した医師出身の宇宙飛行士だ。
東京大学医学部附属病院や日本赤十字社医療センターなどで勤務し、2023年にJAXAへ入構。約1年半にわたる基礎訓練を修了し、2024年10月21日付で宇宙飛行士に認定された。
2026年現在は、将来の搭乗ミッションに向けて訓練を継続している。
以上の6名の経歴から分かるのは、宇宙飛行士に必要な能力が単一の専門分野に限定されないということだ。医学、工学、操縦、地球科学、国際協力など、それぞれの専門性が宇宙開発の現場で生かされている。
歴代の日本人宇宙飛行士と主な実績
JAXAの元宇宙飛行士は7名。現役6名と合わせて、JAXAに在籍する宇宙飛行士は13名となる。
また、JAXAの宇宙飛行士とは別に、日本人として初めて宇宙へ行った秋山豊寛もいる。1990年に旧ソ連のソユーズ宇宙船で宇宙ステーション「ミール」に滞在したジャーナリストだ。
日本人の宇宙飛行の歴史を整理すると、次のようになる。
| 人物 | 位置づけ・主な実績 | 現在の区分 |
|---|---|---|
| 秋山豊寛 | 1990年、日本人初の宇宙飛行。TBS社員としてミールに滞在 | JAXA所属ではない |
| 毛利衛 | 1992年、日本人初のスペースシャトル搭乗。2000年にも飛行 | 元JAXA |
| 向井千秋 | 1994年、日本人・アジア人女性初の宇宙飛行。1998年にも飛行 | 元JAXA |
| 土井隆雄 | 1997年、日本人初の船外活動。2008年には「きぼう」の組み立てに参加 | 元JAXA |
| 若田光一 | 複数回の宇宙飛行を経験。2014年に日本人初のISS船長を務めた | 元JAXA |
| 野口聡一 | 2005年、2009~2010年、2020年に宇宙飛行。日本人初のクルードラゴン搭乗 | 元JAXA |
| 山崎直子 | 2010年に宇宙飛行。ロボットアーム操作などを担当 | 元JAXA |
| 古川聡 | 2011年、2023年にISS長期滞在を経験 | 元JAXA |
| 星出彰彦 | 2008年、2012年、2021年に宇宙飛行 | 現役JAXA |
| 油井亀美也 | 2015年、2025年にISS長期滞在 | 現役JAXA |
| 大西卓哉 | 2016年、2025年にISS長期滞在。日本人3人目のISS船長 | 現役JAXA |
| 金井宣茂 | 2017~2018年にISSへ約168日間滞在 | 現役JAXA |
| 諏訪理 | 2026年にCrew-14搭乗決定。2027年に初飛行予定 | 現役JAXA |
| 米田あゆ | 2024年に宇宙飛行士認定。将来の搭乗に向け訓練中 | 現役JAXA |
日本の有人宇宙活動は、1990年の秋山豊寛による初飛行を経て、1992年の毛利衛によるスペースシャトルでの科学実験へと進んだ。その後、ISSの建設・運用、長期滞在、「きぼう」の活用、民間宇宙船への搭乗へと発展している。
JAXAの公式沿革では、1985年に毛利衛、向井千秋、土井隆雄の3名が第1期生として選抜されたことが、日本の宇宙飛行士育成の大きな出発点として紹介されている。
現在はISSでの活動に加え、月周回有人拠点ゲートウェイや月面探査を見据えた人材育成も進んでいる。日本人宇宙飛行士の役割は、地球低軌道からさらに遠い宇宙へと広がりつつある。
【ISSでの任務と1日のスケジュール】宇宙では何をして過ごす?
宇宙飛行士の生活を理解するうえで欠かせないのが、ISSでの1日のスケジュールだ。
ISSでは、自由に宇宙空間を漂っているように見える時間の裏側で、地上の管制センターと連携した厳密な作業計画が組まれている。実験や設備点検、食事、運動、睡眠まで、限られた時間を計画的に使う必要がある。
ISSでの標準的な1日の流れ
JAXAの宇宙医学関連資料によると、ISSでは基本的に週5日勤務し、1日約6.5時間の業務と約2.5時間の運動を行う。合計すると、標準的な作業時間は約9時間となる。
具体的な時刻や作業内容はミッションによって変わるが、一般的な1日の流れは次のように整理できる。
- 起床・朝食:身支度を整え、地上から届く連絡事項や当日の予定を確認する。
- 朝の打ち合わせ:各国の管制センターと連絡を取り、作業内容や安全上の注意点を共有する。
- 午前の業務:科学実験、装置の操作、設備点検、メンテナンスなどを実施する。
- 昼食・休憩:食事を取り、午後の作業に備える。
- 午後の業務:実験の続き、物資の整理、研究データの確認、地上との打ち合わせなどを行う。
- 運動:トレッドミルや抵抗運動器具などを使って体力を維持する。
- 夕方の確認:作業の進捗や翌日の予定を確認し、必要な報告を行う。
- 自由時間・睡眠:読書や家族との連絡などを行い、睡眠を取る。
なお、これは標準的な生活のイメージであり、実際には船外活動や補給船の到着、宇宙船のドッキングなどによってスケジュールが変更される。
なぜ毎日2時間程度の運動が必要なのか
ISSでの生活には、地上とは異なる身体的な問題がある。微小重力環境では、地球上で立つ、歩くといった動作によって自然に使われている筋肉や骨への負荷が大きく減少する。
何も対策をしなければ、筋肉の萎縮や骨量の減少が進む可能性がある。そのため、宇宙飛行士は毎日約2時間の運動を行っている。
使用する主な器具は次の3種類だ。
- 抵抗運動器具:負荷をかけてスクワットや筋力トレーニングを行う。
- トレッドミル:身体をゴムバンドなどで固定し、ランニングを行う。
- エルゴメーター:自転車のようにペダルをこぎ、有酸素運動を行う。
宇宙での運動は、健康維持だけでなく、地球帰還後の身体機能の回復にも関係する。ISSの滞在中は、仕事と同じように運動もミッションの一部として扱われている。
食事・睡眠・入浴はどうしている?
ISSには睡眠用の個室や食事設備がある。ただし、微小重力環境では水や物が浮遊するため、地上と同じ生活様式は取れない。
食事は保存性の高い宇宙食を中心に、乾燥食品、レトルト食品、フリーズドライ食品などを利用する。JAXAの紹介によると、ISSには300種類以上の宇宙食メニューが用意されている。
睡眠時は寝袋や個室を使い、身体が漂わないように固定する。上下の区別がほとんどない環境なので、壁や天井側を向いて眠ることもできる。
一方、ISSには一般的な浴槽やシャワーはない。身体は濡れたタオルなどで拭き、髪は水を使わずに洗える専用シャンプーなどを利用する。
宇宙飛行士にとって、生活そのものが特殊な環境への適応訓練でもある。実験や運用だけでなく、健康を保ちながら長期間共同生活を送る能力が求められる。

【宇宙飛行士になるには?】応募資格と選抜試験の仕組みを解説
宇宙飛行士を目指す人が最も気になるのが、応募資格と選抜試験だろう。
JAXAが直近で実施した大規模な候補者募集は2021年度募集で、応募受付は2021年12月から2022年3月まで行われた。2023年2月に諏訪理と米田あゆの2名が候補者に決定し、14年ぶりの新規選抜として大きな注目を集めた。
JAXA宇宙飛行士の応募資格
2021年度の募集要項で定められた主な応募条件は以下のとおりだ。
- 国籍:日本国籍を有すること。
- 実務経験:2021年度末時点で3年以上の実務経験を有すること。
- 修士号:修士号取得者は1年間の実務経験として換算される。
- 博士号:博士号取得者は3年間の実務経験として換算される。
- 身長:149.5cm以上190.5cm以下。
- 視力:両眼とも遠距離の矯正視力1.0以上。
- 色覚:石原式による正常な色覚。
- 聴力:背後2mの距離で通常の会話ができること。
注目すべきなのは、特定の理系学部卒業やパイロット資格が一律の応募条件になっていたわけではないことだ。
実際、2023年に選抜された諏訪理は地球科学の研究者や国際機関・世界銀行の職員として働いていた人物であり、米田あゆは医師として勤務していた。異なる専門分野で培った経験が、宇宙飛行士としての能力につながっている。
ただし、上記は2021年度募集の条件であり、次回募集でも同一条件が採用されるとは限らない。応募を考えている場合は、最新のJAXA募集要項を確認する必要がある。
宇宙飛行士選抜試験は5段階で実施される
2021年度募集では、書類選抜、第0次選抜、第一次選抜、第二次選抜、第三次選抜という5段階の審査が行われた。
筆記試験だけで合否が決まるわけではなく、医学的な適性、精神的な特性、コミュニケーション能力、運用技量、チームで活動する能力などを総合的に評価する仕組みだ。
各段階で実施される試験内容
第1段階:書類選抜
応募資格や健康診断結果、健康状況申告、エントリーシートなどを確認する。応募者が宇宙飛行士として活動するための基本的な条件を満たしているかを審査する段階だ。
第2段階:第0次選抜
英語試験に加え、一般教養試験、STEM分野の試験、小論文、適性検査などが実施された。STEMとは科学、技術、工学、数学の総称である。
第3段階:第一次選抜
医学検査、医学的特性検査、プレゼンテーション、資質特性検査、運用技量試験などを実施。知識だけでなく、宇宙飛行士としての適性や実践的な能力を評価する。
第4段階:第二次選抜
さらに詳しい医学検査や医学的特性の確認に加え、英語や資質、プレゼンテーションに関する面接試験が行われる。
第5段階:第三次選抜
最終段階では、医学検査、資質特性検査、運用技量試験、総合面接、英語面接、プレゼンテーションなどを通じて、宇宙飛行士としての総合的な適性を審査する。
4,127人から2人へ。2021年度選抜の実績
今回の選抜で特筆すべきなのが、応募者数の多さだ。
JAXAの公式発表によると、2021年度募集の応募総数は4,127人。前回2008年の963人と比べて約4.3倍となり、当時の過去最多を記録した。
選抜が進むにつれて人数は大幅に絞られ、最終的に諏訪理と米田あゆの2名が候補者に決定した。
- 応募総数:4,127人
- 書類選抜合格者:2,266人
- 第0次選抜合格者:205人
- 第一次選抜合格者:50人
- 第二次選抜合格者:10人
- 第三次選抜合格者:2人
この数字からも、宇宙飛行士選抜試験が単なる学力テストではなく、長期間の宇宙ミッションを遂行するための総合的な人材選考であることが分かる。
また、JAXAの募集要項では、国際的なチームで協力できること、極限環境に適応できること、冷静な判断力やリーダーシップを持つこと、経験や成果を世界に伝える表現力なども求める人物像として示されている。
つまり、優秀な研究者であるだけでも、体力に優れているだけでも十分ではない。異なる文化や専門性を持つ仲間と協力し、予想外の状況にも柔軟に対応できることが重要になる。
【宇宙飛行士の訓練内容】候補者から正式認定、宇宙へ行くまでの道のり
宇宙飛行士候補者に選ばれたからといって、すぐに宇宙へ行けるわけではない。
選抜後には基礎訓練があり、正式に宇宙飛行士として認定された後も、継続的な訓練やミッション別の準備が続く。候補者の選抜は、長いキャリアのスタート地点にすぎない。
基礎訓練は約2年間が目安
JAXAの公式資料によると、宇宙飛行士候補者は約2年間の基礎訓練を通して、宇宙飛行士に必要な知識や技術を身に付ける。
訓練は主に次の4分野で構成される。
- 宇宙開発・工学の知識:JAXAの業務、宇宙機、航空宇宙工学、日本や各国の宇宙開発計画などを学ぶ。
- ISS・「きぼう」のシステム:ISSの構造、運用方法、各種設備や実験装置の仕組みを理解する。
- 科学分野の知識:ライフサイエンス、材料科学、流体科学、地球観測、宇宙観測などを学ぶ。
- 基礎能力訓練:健康管理、体力づくり、語学、航空機操縦、サバイバル技術、スキューバなどを習得する。
座学だけでなく、実際に身体を動かす実習や訓練も数多く含まれている。
水中訓練や無重力訓練で宇宙環境に備える
宇宙飛行士の訓練で特徴的なのが、水中を利用した船外活動訓練だ。
地球上で宇宙空間の微小重力状態を完全に再現することは難しいが、水中では浮力を利用して身体を支え、宇宙空間に近い作業環境を模擬できる。
特にNASAの中性浮力実験施設(NBL)では、宇宙服を着用して水中で作業する訓練が行われる。ISSの外側で設備を修理したり、機器を設置したりするための技術を磨くのが目的だ。
そのほか、航空機を利用した無重力体感訓練、低圧環境への適応訓練、水上サバイバル訓練なども実施される。
2026年には諏訪理と米田あゆが米国ペンサコーラで水上サバイバル訓練に参加したことがJAXAの活動レポートで紹介された。宇宙船が予定外の場所に着水した場合などを想定し、安全に生き延びる能力を身に付けるための訓練だ。
米田あゆと諏訪理が経験した基礎訓練
2023年2月に候補者に選ばれた米田あゆと諏訪理は、それぞれ2023年4月、同年7月からJAXAで基礎訓練を開始した。
2人は2024年10月21日付で正式な宇宙飛行士として認定されている。2024年10月29日に公開されたJAXAの会見レポートでは、基礎訓練の内容や認定後の活動について説明された。
諏訪は認定後も訓練が続くことに触れ、宇宙開発の変化に対応しながら科学的成果を地球へ届ける宇宙飛行士を目指す考えを示した。
また、諏訪は2025年9月に欧州宇宙機関(ESA)のCAVES訓練にも参加している。これは洞窟という閉鎖的で複雑な環境で、チームワークや判断力を磨く訓練だ。
宇宙飛行士に認定されても訓練は終わらない
正式認定後も、宇宙飛行士は体力や技能を維持するための訓練を続ける。
さらに、ISSへの搭乗が決まれば、実際のミッションに合わせた専門訓練が始まる。JAXAの説明では、ミッション固有の訓練期間は約1~2年が目安となる。
ロボットアームの操作、船外活動、宇宙船のシステム操作、実験手順など、担当する任務に必要な能力を徹底的に身に付ける。
このほか、研究者と直接会って実験の目的や手順を確認するなど、専門的な準備も欠かせない。
2021年度の募集要項では、候補者選抜後、搭乗業務に至るまでの訓練期間が長い場合は7~10年程度に及ぶ可能性も示されていた。選抜から宇宙飛行までには、長い時間をかけた準備が必要なのである。

【2026年最新】諏訪理のCrew-14搭乗決定!2027年の宇宙飛行計画とは
2026年の日本人宇宙飛行士に関する大きなニュースが、諏訪理のISS長期滞在ミッションへの搭乗決定だ。
JAXAは2026年9月25日、諏訪がクルードラゴン宇宙船運用14号機(Crew-14)に搭乗すると正式発表した。諏訪にとって初めての宇宙飛行となる。
2026年9月25日に搭乗機が正式決定
諏訪は2026年1月、ISS長期滞在搭乗員に指名された。その後、訓練を続けるなかで、搭乗する宇宙船がCrew-14に決まった。
NASAも2026年9月24日付の公式発表でCrew-14の搭乗員を公表している。クルーは次の4名だ。
- ケイラ・バロン(NASA):宇宙船の船長
- クリス・バーチ(NASA):パイロット
- 諏訪理(JAXA):ミッションスペシャリスト
- アルチュン・キビリヤン(ロスコスモス):ミッションスペシャリスト
3つの宇宙機関から4名が参加する国際共同ミッションとなる。
打ち上げは2027年3月以降を予定
JAXAの発表によれば、Crew-14の打ち上げは2027年3月以降を予定している。
NASAの発表でも、2027年春以降のISS長期滞在ミッションとして位置付けられている。具体的な打ち上げ日時は、2026年10月時点では確定していない。
ISSに到着したCrew-14は、ISS第75次/第76次長期滞在に加わる予定だ。長期間の科学ミッションを通じて、宇宙環境を利用した研究やISSの運用に携わることになる。
諏訪理が歩んできた異色のキャリア
諏訪理の経歴が注目される理由は、宇宙飛行士になる前の仕事にある。
1977年生まれの諏訪は、プリンストン大学大学院で地球科学を専攻し、2007年に博士号を取得。その後、青年海外協力隊としてルワンダに派遣され、国連の世界気象機関(WMO)や世界銀行で勤務した。
世界銀行などで培った国際的な経験や、地球規模の課題に向き合ってきた専門性は、国際協力が不可欠な宇宙開発の現場でも生かされる可能性がある。
2026年9月25日のJAXA発表では、諏訪自身も初飛行に向けた意気込みを公表している。
「宇宙で得た経験や感動を地球へ持ち帰り、その魅力や価値を多くの方々にお伝えするとともに、宇宙開発の成果を少しでも社会へ還元できるように努力を続けていきます。」
宇宙飛行を単なる個人の経験にとどめず、地球上の人々や社会に成果を還元するという考え方が表れている。
米田あゆの今後のミッションにも注目
諏訪と同じ2023年に候補者となり、2024年10月に正式認定された米田あゆも、2026年現在、訓練を続けている。
米田は医師としての経験を持ち、医学や人体に関する知識が専門的な強みとなる。微小重力環境が人体に与える影響や、長期滞在中の健康管理などは、有人宇宙活動における重要な研究テーマだ。
2026年8月には諏訪とともに水上サバイバル訓練に参加している。搭乗ミッションは今後の課題だが、基礎能力を磨きながら宇宙飛行士としての経験を積み重ねている。
日本の宇宙開発は、ISSでの長期滞在から月探査や国際宇宙探査へと活動領域を広げようとしている。諏訪と米田の世代は、次の有人宇宙活動を担う人材として期待されている。
【宇宙飛行士に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:宇宙飛行士になるには、理系大学を卒業する必要がありますか?
A1:2021年度のJAXA募集要項では、特定の理系学部卒業を一律の応募条件とはしていませんでした。実務経験や医学的条件などが定められ、専門分野も幅広く評価されました。医師出身の米田あゆや、国際機関・世界銀行で働いた諏訪理の経歴からも、多様な専門性が生かされることが分かります。
Q2:宇宙飛行士の仕事は宇宙にいる間だけですか?
A2:いいえ。地上での実験装置の開発、ミッション計画、管制支援、訓練、広報活動なども重要な仕事です。実際に宇宙へ行く頻度は、JAXAの過去の例では多くが5~10年に1回程度とされています。
Q3:宇宙飛行士の選抜試験は何段階ありますか?
A3:2021年度のJAXA募集では、書類選抜、第0次選抜、第一次選抜、第二次選抜、第三次選抜の5段階でした。英語、一般教養、STEM、医学検査、適性検査、面接、運用技量などを総合的に審査します。
Q4:宇宙飛行士はISSで毎日運動するのですか?
A4:はい。微小重力環境では筋肉や骨が弱くなる可能性があるため、ISSの宇宙飛行士は毎日約2時間の運動を行います。抵抗運動器具、トレッドミル、エルゴメーターなどを使用します。
Q5:2026年現在、日本人宇宙飛行士は何人いますか?
A5:JAXAの公式プロフィールに掲載されている現役宇宙飛行士は6名です。星出彰彦、油井亀美也、大西卓哉、金井宣茂、諏訪理、米田あゆが在籍しています。別に元JAXA宇宙飛行士が7名います。
Q6:諏訪理はいつ宇宙へ行く予定ですか?
A6:諏訪理はクルードラゴン宇宙船運用14号機(Crew-14)に搭乗することが2026年9月25日に正式発表されました。打ち上げは2027年3月以降の予定で、具体的な日程はまだ確定していません。
Q7:宇宙飛行士になるために英語力は必要ですか?
A7:必要です。ISSは複数国が共同運用する施設であり、国際的なチームとの連絡や訓練で英語を使用します。2021年度の選抜でも英語試験が実施され、基礎訓練でも語学の習得が行われました。
まとめ:宇宙飛行士は地上と宇宙をつなぐ専門職、2027年の諏訪理にも注目
宇宙飛行士の仕事は、ロケットに乗って宇宙へ行くことだけではない。ISSでの科学実験、設備の保守、ロボットアーム操作、船外活動に加え、地上での研究開発や管制支援、訓練、広報活動など、多岐にわたる業務を担っている。
2026年10月現在、JAXAの現役宇宙飛行士は6名。星出彰彦、油井亀美也、大西卓哉、金井宣茂という経験豊富な飛行士に加え、諏訪理と米田あゆという新しい世代が活動している。
宇宙飛行士を目指す場合は、専門分野の知識だけでなく、実務経験、英語力、健康管理、協調性、問題解決能力などを総合的に磨くことが求められる。2021年度の選抜実績が示すように、選抜試験は非常に厳しく、候補者に決まった後も長期にわたる訓練が待っている。
2026年の最大の注目材料は、諏訪理のCrew-14搭乗決定だ。2027年3月以降に予定される初飛行は、日本人宇宙飛行士の新たな活躍を示す機会となる。
また、医師としての経験を持つ米田あゆを含む新世代の宇宙飛行士が、今後どのようなミッションに参加するのかも注目される。ISSで培われた経験を月探査や将来の有人宇宙活動へつなげるため、日本人宇宙飛行士の役割は今後さらに広がっていく。
宇宙飛行士という職業の本質は、宇宙へ行くことだけではなく、そこで得た知識や技術、経験を地球の社会に還元することにある。2027年の諏訪理の初飛行は、その役割を改めて考える重要な節目になりそうだ。
主な情報源: JAXA公式「宇宙飛行士」プロフィール・活動レポート、JAXA宇宙飛行士候補者募集要項・選抜結果、JAXAのISS生活・有人宇宙活動資料、NASAの2026年9月24日付Crew-14搭乗員発表。 (出典: 宇宙 飛行 士(Yahoo!ニュース))