「獅子面病」は正式名称?獅子顔貌・骨性獅子顔貌の原因と検査、治療を徹底解説
「獅子面病(ししめんびょう)」とは、どのような病気なのか。名前から特定の疾患を想像する人もいるが、医学的には少し注意が必要な言葉だ。日本神経学会の神経学用語集では、leontiasisを「獅子顔貌」、leontiasis osseaを「骨性獅子顔貌」と訳している。いずれもライオンのように見える顔つきを表す医学用語であり、単一の原因や病態を持つ独立した病名とは異なる。
骨性獅子顔貌の背景には、線維性骨異形成症、骨パジェット病、慢性腎臓病に伴う腎性骨異栄養症など、複数の疾患がある。なかでも重度の続発性副甲状腺機能亢進症によって生じる尿毒症性骨性獅子顔貌は、顎骨の著しい肥厚だけでなく、呼吸や嚥下、発声などにも影響することがある。2026年10月時点の医学文献を踏まえ、名称の違いから原因、症状、CT検査、鑑別診断、治療法まで整理する。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 正式名称:「獅子面病」は単一の正式病名ではなく、医学的には「獅子顔貌」「骨性獅子顔貌」という形態を表す用語が使われる。
- 主な原因:線維性骨異形成症、骨パジェット病、腎性骨異栄養症などが顔面骨の肥厚を引き起こす。
- 診断方法:顔面骨CT、血液検査、腎機能・副甲状腺ホルモンの評価などを組み合わせて原因を調べる。
- 治療の基本:顔貌そのものではなく、原因疾患を治療する。病状によって薬物療法、副甲状腺手術、顎顔面の外科治療などを検討する。
【正式名称を解説】獅子面病は正式な病名なのか?獅子顔貌・骨性獅子顔貌との違い
「獅子面病」は独立した疾患名ではない
最初に押さえておきたいのは、「獅子面病」という言葉と、医学用語としてのleontiasis osseaは完全に同じ意味で扱えるわけではないという点だ。
医学用語のleontiasisは、ライオンを思わせる顔つきを指す表現で、日本語では「獅子顔貌」と訳される。一方、leontiasis osseaは「骨性獅子顔貌」であり、顔面や頭蓋骨の異常な肥厚・増大によって生じる外見上の特徴を指す。
日本神経学会の神経学用語集や日本脳神経外科学会の用語集にも、この区別に対応する訳語が掲載されている。したがって、「獅子面病」という名称だけで特定の病気を診断することはできない。
Leontiasis osseaの歴史と医学的な意味
Leontiasis osseaという名称は、19世紀の病理学者ルドルフ・ウィルヒョウ(Rudolf Virchow)が1869年に用いた歴史を持つ。ライオンのように見える顔貌と、顔面骨の異常な増大を関連づけた表現として医学史に残っている。
ただし、現在の医学では、Leontiasis osseaは特定の原因だけに結びつく疾患名ではなく、複数の骨疾患に共通する頭蓋顔面の骨肥厚を表す記述的な概念として理解されている。
実際、2007年に発表された病理学的症例報告でも、Leontiasis osseaは顔面骨の過形成によってライオンのような外観を呈する、複数の骨疾患に共通した記述的名称として整理されている。
獅子顔貌と骨性獅子顔貌は何が違う?
大きな違いは、顔貌の変化を生み出している組織にある。
獅子顔貌は、皮膚や皮下組織の浸潤・肥厚などによって、顔全体が厚く、凹凸の目立つ外観になる場合にも使われる。一方、骨性獅子顔貌は、上顎骨、下顎骨、頬骨、頭蓋骨などの骨そのものが増大する状態を指す。
つまり、顔が大きく見えるという外見上の共通点があっても、原因が骨なのか、皮膚や軟部組織なのかによって診断も治療も大きく異なる。

【原因を徹底比較】顔面骨肥厚を引き起こす代表的な3つの疾患
骨性獅子顔貌の原因として、医学文献で繰り返し取り上げられているのが、線維性骨異形成症、骨パジェット病、腎性骨異栄養症である。
これらは同じように顔面骨を大きくすることがあるものの、骨が変化する仕組みは異なる。
1.線維性骨異形成症:正常な骨が線維性組織に置き換わる
線維性骨異形成症(Fibrous Dysplasia)は、正常な骨組織の一部が線維性組織を含む異常な骨組織に置き換わり、骨が膨らんだり変形したりする疾患である。
単一の骨に生じる単骨性と、複数の骨に及ぶ多骨性がある。頭蓋骨や顔面骨に発生すると、頬や顎の左右差、眼球突出、顔面の変形などが現れる場合がある。
発症にはGNAS遺伝子の体細胞性活性化変異が関係している。受精後に生じる変異によって、正常な細胞と変異を持つ細胞が混在するモザイク状態になることが特徴だ。遺伝性の病気として単純に説明できるものではない。
画像検査では、すりガラス状(ground-glass appearance)の骨内部構造が代表的な所見として知られる。顔面骨に広範囲に発生した場合、骨の肥厚が目立ち、骨性獅子顔貌に似た外観を呈することがある。
2.骨パジェット病:骨の形成と吸収のバランスが崩れる
骨パジェット病(Paget's disease of bone)は、骨の破壊と再形成が異常に活発になることで、骨の構造や形状が変化する疾患である。
通常の骨では、古い骨を破骨細胞が吸収し、骨芽細胞が新しい骨を形成する。この骨リモデリングが過剰かつ不規則になると、骨は大きくなっても内部構造が正常とは異なる状態になる。
頭蓋骨が侵されると、頭部の変形、頭痛、聴力障害などにつながることがある。顔面骨に影響した場合には、顎や顔の輪郭が変化する可能性もある。
骨代謝が活発な場合、血液検査でアルカリホスファターゼ(ALP)が上昇することがある。ただし、ALPの上昇だけで骨パジェット病と確定することはできない。肝疾患などでも数値が上昇するため、肝機能検査や画像所見との照合が必要だ。
3.腎性骨異栄養症:慢性腎臓病と副甲状腺ホルモンの関係
腎性骨異栄養症(Renal Osteodystrophy)は、慢性腎臓病によってカルシウム、リン、ビタミンD、骨代謝などの調節が乱れ、骨に異常が生じる病態である。
腎機能が低下すると、リンの排泄や活性型ビタミンDの産生が障害され、カルシウムのバランスにも影響が及ぶ。こうした変化が続くと、副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌が増加し、続発性副甲状腺機能亢進症を引き起こすことがある。
PTHが長期間にわたり過剰に分泌されると、骨吸収と骨形成が異常に活発になり、骨の構造が変化する。重症化すると、顔面骨、とくに上顎骨や下顎骨が著しく肥厚する場合がある。
この状態が尿毒症性骨性獅子顔貌(Uremic Leontiasis Ossea:ULO)である。腎性骨異栄養症のまれな重症合併症であり、骨の変化が進行すると、食事や会話、呼吸にも支障をきたす可能性がある。
その他にも考えられる原因
顔面骨の増大を伴う状態は、上記の3疾患だけに限られない。巨人症や先端巨大症、慢性溶血性貧血、サラセミア、鎌状赤血球症などでも、骨格の変化によって似た外観が生じることがある。
また、皮膚や皮下組織が厚くなることで獅子様顔貌を呈する疾患もある。原因を一つに決めつけず、骨の病変と軟部組織の病変を区別することが診断の出発点になる。
【症状と特徴】獅子様顔貌ではどのような変化が現れるのか
骨性獅子顔貌の特徴は、顔面骨の増大によって顔の輪郭や口腔・鼻腔周辺の構造が変化することだ。変化の程度や進行速度は原因疾患によって異なり、すべての患者に同じ症状が現れるわけではない。
顔面に現れやすい主な症状
代表的な変化には、次のようなものがある。
- 上顎骨や下顎骨が大きくなる。
- 頬骨や顔面中央部の輪郭が変化する。
- 鼻の付け根が平坦になる。
- 鼻孔が広がり、鼻の形状が変化する。
- 歯と歯の間隔が広がる。
- 噛み合わせが変わり、咀嚼しにくくなる。
- 顔の左右差や顎の突出が目立つ。
尿毒症性骨性獅子顔貌では、上顎や硬口蓋の骨増大が顕著になることがあり、歯列の変化や口腔内の膨隆を伴うケースも報告されている。
進行すると呼吸・嚥下・視覚にも影響する
骨の肥厚が進むと、顔の外観だけでなく、周辺の重要な器官にも影響する。
例えば、鼻腔や副鼻腔が狭くなることで鼻呼吸が難しくなったり、口腔や咽頭周辺の構造が変化することで飲み込みにくさが生じたりすることがある。
さらに、眼窩や頭蓋底周辺の骨が増大すると、視神経や脳神経が圧迫され、視力低下や視野異常、聴力障害、顔面の感覚異常などにつながる可能性もある。
特に注意したいのは、急速な顔面の変形に加えて、呼吸困難、嚥下障害、視力の変化などが現れた場合だ。こうした症状は機能障害のサインであり、早急な医療評価が必要になる。
皮膚の獅子様顔貌とは別の症状もある
獅子様顔貌という表現は、皮膚科領域でも使用される。
例えば、らい腫型ハンセン病では、皮膚への細胞浸潤によって顔面が厚くなり、深いしわや結節、眉毛の脱落、耳介の肥厚などが生じることがある。
このほか、皮膚T細胞リンパ腫、毛包向性菌状息肉症、皮膚サルコイドーシス、全身性アミロイドーシスなども、獅子様顔貌の鑑別対象になる。
2025年4月発行の日本の皮膚科専門誌『皮膚病診療』にも、獅子様顔貌を呈した毛包向性菌状息肉症の症例が掲載された。これは骨の肥厚による骨性獅子顔貌とは異なる病態である。
つまり、見た目が似ていても、皮膚の浸潤によるものなのか、骨そのものの増大によるものなのかを見極める必要がある。

【鑑別診断とCT検査】獅子顔貌の原因を見分ける医学的な検査
獅子顔貌の診断では、顔の形だけを見て病名を決めることはできない。発症時期、進行速度、既往歴、血液検査、画像検査を組み合わせ、骨の変化を生み出している原因を特定する。
顔面骨CT検査が重要になる理由
顔面骨の肥厚を詳しく調べるうえで、CT検査は重要な役割を果たす。特に骨条件で撮影したCT画像や三次元再構成画像は、上顎骨、下顎骨、頬骨、眼窩、頭蓋底などの形状と病変の広がりを確認するのに適している。
原因によって、画像上の特徴は異なる。
- 線維性骨異形成症:すりガラス状の骨内部構造や、骨の膨張、皮質骨の菲薄化などが手がかりになる。
- 骨パジェット病:骨の肥大や硬化・融解が混在する変化などを評価する。
- 尿毒症性骨性獅子顔貌:上顎骨や下顎骨を中心とした左右対称性の骨増大、骨皮質の吸収、骨内部の蛇行状のトンネル構造などが特徴的な所見として報告されている。
特に尿毒症性骨性獅子顔貌では、骨内部の蛇行状構造(serpiginous tunneling)が重要な画像所見になる。通常の骨皮質と骨髄の境界が不明瞭になることもあり、腎性骨異栄養症による骨代謝異常を考える手がかりになる。
2024年5月に米国放射線学会の専門誌『Radiology』に掲載された症例報告でも、顔面CTによる上顎骨・下顎骨の左右対称性の肥厚や、内部の特徴的な構造が取り上げられている。
血液検査では何を調べるのか
画像検査と並んで重要なのが血液検査である。特に腎性骨異栄養症が疑われる場合には、腎機能と骨・ミネラル代謝の状態を詳しく確認する。
- クレアチニン・eGFR:腎機能の低下や慢性腎臓病の程度を評価する。
- カルシウム:骨代謝に関係するミネラルの状態を確認する。
- リン:腎臓からの排泄障害やミネラル代謝異常を調べる。
- intact PTH(副甲状腺ホルモン):続発性副甲状腺機能亢進症の程度を評価する。
- ALP:骨代謝の活発さを調べる手がかりになる。
- 25-OHビタミンD:ビタミンD不足の有無を評価する。
骨パジェット病ではALPと肝機能検査を組み合わせ、必要に応じて骨シンチグラフィーで病変の範囲を確認する。2019年に公表された骨パジェット病の診断・管理ガイドラインでも、標的部位のX線検査、骨シンチグラフィー、血清ALPの評価が推奨されている。
一方、線維性骨異形成症ではCT画像の特徴が診断の中心となる。非典型的な画像所見や悪性病変が疑われる場合には、病理検査や病変組織の遺伝子検査が検討される。
主な原因疾患と鑑別ポイントの比較
| 病態・原因 | 顔面骨への影響 | 鑑別の手がかり | 治療の基本方針 |
|---|---|---|---|
| 線維性骨異形成症 | 線維性組織を含む骨病変による膨張・肥厚 | CTのすりガラス状変化、GNAS遺伝子変異 | 経過観察、疼痛管理、必要に応じた外科治療 |
| 骨パジェット病 | 骨代謝の異常による骨の肥大・変形 | ALP、X線、骨シンチグラフィー | 症状に応じたビスホスホネート治療 |
| 腎性骨異栄養症・尿毒症性骨性獅子顔貌 | 上顎骨・下顎骨を中心とした広範囲の肥厚 | 慢性腎臓病、PTH高値、CTの蛇行状骨内部構造 | CKD-MBD管理、PTH抑制、必要に応じた副甲状腺手術 |
| 皮膚浸潤性疾患 | 皮膚・皮下組織の肥厚や結節 | 皮疹、皮膚生検、病理組織検査 | 原因となる皮膚疾患や血液疾患の治療 |
| その他の骨代謝・内分泌疾患 | 骨格の肥大や顔面骨の形態変化 | ホルモン検査、血液検査、全身画像 | 原疾患に応じた内科的治療 |
この比較から分かるのは、獅子顔貌という外観は診断の出発点にすぎないということだ。特に腎性骨異栄養症では、顔面だけでなく全身の骨代謝にも異常が及んでいる可能性があるため、顔面CTだけで診断を完結させないことが重要になる。
【治療法を解説】獅子顔貌は改善できる?原因疾患別の治療と最新情報
獅子顔貌の治療に共通する単一の薬や手術方法は存在しない。基本的な考え方は、顔貌の原因となっている疾患を治療し、骨の変化や周辺器官への影響を抑えることだ。
線維性骨異形成症の治療
症状が軽く、視力や聴力、咀嚼などの機能に問題がない場合は、定期的な診察と画像検査による経過観察が選択される。
顔面の変形が進行している場合や、視神経・聴覚器官への圧迫、咀嚼障害などが生じている場合には、頭蓋顎顔面外科や耳鼻咽喉科、眼科などが連携して治療方針を決定する。
外科治療では、骨の一部を削って輪郭を整える方法や、病変を切除して再建する方法などが検討される。ただし、病変の部位や範囲によっては再増大の可能性があり、手術による神経・血管への影響も考慮しなければならない。
薬物療法では、ビスホスホネート製剤が一部の患者の骨痛を軽減する目的で使用される。しかし、骨病変そのものを確実に縮小させる治療とは位置づけられていない。
骨パジェット病の治療
骨パジェット病では、骨代謝の過剰な活性化を抑えるビスホスホネート製剤が治療の中心になる。なかでもゾレドロン酸は、骨痛に対して良好な効果が期待できる薬剤として、2019年の国際的な診療ガイドラインで推奨されている。
ただし、治療の判断はALPの数値だけで行うものではない。骨痛や病変の活動性、将来的な合併症の危険性などを総合的に評価する必要がある。
同ガイドラインは、単純にALPを正常化することを目標にするよりも、患者の症状を改善することを重視している。
尿毒症性骨性獅子顔貌の治療
腎性骨異栄養症による尿毒症性骨性獅子顔貌では、慢性腎臓病に伴うミネラル代謝異常と続発性副甲状腺機能亢進症の管理が治療の中心になる。
具体的には、腎機能や血液検査の結果に応じて、リン管理、カルシウム管理、活性型ビタミンD製剤、カルシウム受容体作動薬(カルシミメティクス)などを組み合わせる。
薬物療法で十分な効果が得られず、重度の副甲状腺機能亢進症が持続する場合には、副甲状腺摘出術が検討される。
KDIGOの2017年CKD-MBD診療ガイドラインでは、重度の副甲状腺機能亢進症が薬物療法に反応しない場合、副甲状腺摘出術を考慮するよう提案している。
ただし、手術後には骨へのカルシウム移動が急激に進むハングリーボーン症候群や低カルシウム血症などに注意しなければならない。術後のカルシウム・リン管理も重要になる。
顔面骨の外科手術については、呼吸、咀嚼、嚥下、視覚などの機能障害や外見上の問題を踏まえて個別に判断する。2025年の症例報告でも、尿毒症性骨性獅子顔貌に対する顎顔面手術の標準的な術式は確立していないと整理されている。
2025~2026年の医学文献で注目される研究
2026年10月時点で注目したいのは、尿毒症性骨性獅子顔貌に関する症例報告と、線維性骨異形成症の新しい薬物療法に関する研究である。
2025年1~2月刊行の『AACE Clinical Case Reports』には、治療抵抗性の続発性副甲状腺機能亢進症を背景に、尿毒症性骨性獅子顔貌を発症した48歳女性の症例が掲載された。
この患者は末期腎不全で血液透析を受けており、顔貌の変化が約3か月で進行。上顎骨と硬口蓋の骨増大、歯列の間隔の拡大に加え、嚥下障害や発音の困難が認められた。
血液検査ではPTHが4,429pg/mLと著しく高く、ビタミンD不足も確認された。患者は複数の副甲状腺を切除する手術を受け、術直後にはPTHが600pg/mLまで低下し、退院時には10pg/mLまで低下したと報告されている。
この症例は、重度の副甲状腺機能亢進症が顔面骨に深刻な変化をもたらす可能性と、内分泌・腎臓領域の治療が重要であることを示している。ただし、単一症例の経過であり、すべての患者に同じ治療効果が得られることを意味しない。
一方、2025年6月にオンライン公開された線維性骨異形成症の医学レビューでは、デノスマブやブロスマブなど、新しい薬物療法の研究動向が整理された。
デノスマブは骨吸収に関係するRANKLを標的とする薬剤で、線維性骨異形成症の病変活動性や疼痛を抑える可能性が研究されている。しかし、治療中止後の骨代謝の反跳や高カルシウム血症などの危険性があり、同疾患に対する確立した標準治療ではない。
ブロスマブについても、FGF23に関連した低リン血症への効果が研究されている段階であり、線維性骨異形成症そのものに対する標準的な治療として確立しているわけではない。
2026年時点の重要なポイントは、画像診断や遺伝子解析の精度が向上する一方、骨性獅子顔貌そのものを対象とした統一的な治療法は確立していないという点にある。希少な病態だからこそ、原因疾患ごとの診療ガイドラインと専門医による個別判断が欠かせない。

【受診の目安と判断基準】獅子顔貌が疑われる場合は何科に行くべき?
顔の形が変わってきたと感じても、原因が骨なのか、皮膚なのか、内分泌・代謝の異常なのかは、外見だけでは判断できない。受診先は、併存症や症状によって変わる。
症状に応じた主な受診先
- 顔面骨の膨らみや左右差:口腔外科、形成外科、頭蓋顎顔面外科
- 慢性腎臓病や透析中の顔貌変化:腎臓内科、透析担当医
- PTHやカルシウムの異常:内分泌内科、腎臓内科
- 骨痛や骨代謝異常:整形外科、内分泌内科
- 皮膚の結節や肥厚:皮膚科
- 視力・聴力の変化:眼科、耳鼻咽喉科
慢性腎臓病で透析を受けている人に、顎の急激な肥大、歯列の変化、硬口蓋の膨隆などが現れた場合には、透析担当医や腎臓内科への早めの相談が必要になる。
特に早急な医療評価が必要な症状
次の症状がある場合は、単なる顔貌の変化として経過を見続けるべきではない。
- 息苦しさや呼吸時の異常音がある。
- 食べ物や飲み物を飲み込みにくい。
- 短期間で顎や顔面の腫大が進行している。
- 急激な視力低下や視野の異常がある。
- 急に聞こえにくくなった、顔面の感覚が変化した。
- 強い骨痛や急激な頭痛を伴う。
呼吸困難や急激な視力低下などがある場合は、通常の予約受診を待たず、救急医療を含めた速やかな評価が必要だ。
インターネットで情報を調べる際の判断基準
獅子面病について調べるときは、次の3点を確認すると、異なる疾患の情報を混同しにくくなる。
第一に、骨の病気なのか皮膚の病気なのか。Leontiasis osseaと皮膚浸潤によるleonine faciesは、似た顔貌を呈しても原因が異なる。
第二に、腎臓病や副甲状腺機能亢進症の有無。透析歴、腎機能、PTH、カルシウム、リンの情報は、尿毒症性骨性獅子顔貌を考えるうえで重要になる。
第三に、医学論文が症例報告なのか、診療ガイドラインなのか。希少疾患では症例報告が診断や治療の重要な手がかりになるが、1人の患者に有効だった治療を、そのまま一般的な標準治療と考えることはできない。
【獅子面病に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:「獅子面病」の正式名称は何ですか?
A1:「獅子面病」は単一の疾患を示す標準的な病名ではありません。医学用語では、leontiasisが「獅子顔貌」、leontiasis osseaが「骨性獅子顔貌」と訳されます。特に骨性獅子顔貌は、複数の疾患によって顔面骨が肥厚した状態を表す用語です。
Q2:獅子顔貌になる主な原因は何ですか?
A2:骨性獅子顔貌の原因として、線維性骨異形成症、骨パジェット病、腎性骨異栄養症などが知られています。皮膚や皮下組織の浸潤によって獅子様顔貌が現れる場合には、ハンセン病や皮膚リンパ腫なども鑑別対象になります。
Q3:尿毒症性骨性獅子顔貌とは何ですか?
A3:慢性腎臓病に伴う腎性骨異栄養症が重症化し、顔面骨が著しく肥厚するまれな病態です。続発性副甲状腺機能亢進症が重要な原因となり、上顎骨や下顎骨の増大、歯列の変化、嚥下障害、発音障害などが生じることがあります。
Q4:獅子顔貌はCT検査で診断できますか?
A4:CT検査は顔面骨の肥厚や内部構造、病変の広がりを確認するために非常に有用です。ただし、CTだけで原因疾患を確定できるとは限りません。腎機能、PTH、カルシウム、リン、ALPなどの血液検査や病歴を組み合わせて診断します。
Q5:獅子面病は治療で元の顔に戻りますか?
A5:改善の程度は原因疾患、骨の変形の進行度、周辺器官への影響によって異なります。原因疾患を適切に治療することで進行を抑えたり、一部の骨病変が改善したりする可能性はありますが、すでに生じた骨格の変形が完全に元に戻るとは限りません。必要に応じて顎顔面の再建手術なども検討されます。
Q6:獅子様顔貌はハンセン病と同じ意味ですか?
A6:同じ意味ではありません。獅子様顔貌はライオンのように見える顔つきを表す形態的な用語です。ハンセン病はその原因の一つとして知られていますが、線維性骨異形成症や腎性骨異栄養症など、感染症とは関係のない疾患でも似た顔貌が生じることがあります。
まとめ:獅子面病を正しく理解するには原因疾患の特定が重要
「獅子面病」という言葉は、特定の病気を一つに指す正式な診断名ではない。医学的には「獅子顔貌」と「骨性獅子顔貌」を区別し、顔貌の変化が皮膚によるものなのか、顔面骨の肥厚によるものなのかを見極めることが重要だ。
骨性獅子顔貌の代表的な原因には、線維性骨異形成症、骨パジェット病、腎性骨異栄養症がある。なかでも尿毒症性骨性獅子顔貌は、慢性腎臓病に伴う重度の続発性副甲状腺機能亢進症と関連し、呼吸や嚥下などの生命・生活機能に影響することがある。
診断では顔面骨CTだけでなく、腎機能、PTH、カルシウム、リン、ALPなどの血液検査を組み合わせる。治療も原因疾患によって異なり、骨代謝の管理、薬物療法、副甲状腺摘出術、顎顔面の外科治療などを個別に検討する。
2025年までに公表された医学レビューや症例報告は、画像診断の重要性と原因疾患に応じた治療の必要性を改めて示している。一方、希少な病態であるため、顔貌そのものに対する統一的な治療法は確立していない。
外見上の特徴だけで病気を決めつけず、その背後にある骨代謝、腎機能、内分泌、皮膚の異常を丁寧に調べること。それが獅子顔貌を正しく理解し、適切な治療につなげるための最も重要な判断基準となる。
医学的根拠として参照した主な文献・資料
- 日本神経学会「神経学用語集」
- 日本脳神経外科学会「脳神経外科学用語集」
- 『Radiology』2024年5月掲載「Uremic Leontiasis Ossea」
- 『AACE Clinical Case Reports』2025年掲載「Uremic Leontiasis Ossea due to Resistant Secondary Hyperparathyroidism」
- Wentworthら、2025年「Update on the medical management of fibrous dysplasia of the bone」
- KDIGO「2017 Clinical Practice Guideline Update for CKD-MBD」
- 『Journal of Bone and Mineral Research』2019年「Diagnosis and Management of Paget's Disease of Bone in Adults」
- 『皮膚病診療』2025年4月号「獅子様顔貌を呈し,治療抵抗性を示した毛包向性菌状息肉症」
(出典: 獅子 面 病(Yahoo!ニュース))